抗精神病薬内服中の男性患者が乳房の膨らみを訴えたら?
- 管理人
- 5月8日
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更新日:5月10日
抗精神病薬内服中の男性が乳房の膨らみを訴えた場合に、まず頭に浮かぶのは、抗精神病薬による高プロラクチン血症とそれに引き続く女性化乳房、という臨床推論だと思います。
しかしながら、有病率はとても低いながらも男性乳癌の可能性や、女性化乳房の高プロラクチン血症以外の原因についても検討しなければなりません。この記事では、女性化乳房と乳癌との鑑別、女性化乳房の原因疾患について解説します。
●女性化乳房と男性乳癌の鑑別について
まず、下表が示す通り女性化乳房の有病率は非常に高く、日常診療で遭遇する乳房の膨らみは女性化乳房である可能性が高いです。

しかしながら、下表のように悪性を示唆する所見が認められた場合は、男性乳癌可能性が浮上します。

つまり、片側、不正、弾性硬、固定、乳頭の変形、滲出物、潰瘍、腋窩リンパ節腫脹などが認められた場合には、その腫瘤が乳癌である可能性が高くなります。乳癌が疑わしい場合は、超音波やCTなどでの乳腺組織の評価し、細胞診や組織診による病理検査が必要となるので、速やかに乳腺外科にする必要があります。
●女性化乳房の原因について
女性化乳房は、エストラジオール/テストステロン比(E2/T比)の上昇により、乳管上皮が過形成し、周囲の結合織が増生することで生じます。
つまり、エストラジオールが増える病態、もしくはテストステロンが減少する病態で女性化乳房が生じます。
下表が女性化乳房の原因となる疾患または病態です。

このように、抗精神病薬による高プロラクチン血症は、女性化乳房の数ある原因の一つに過ぎません。
抗精神病薬内服中の男性が乳房の膨らみを訴えた場合、被疑薬を減量、中止するととも、プロラクチンや甲状腺ホルモンを含む血液検査や頭部画像評価を行い、その他の原因を除外する必要があります。
参考文献
Gynecomastia and hormones. Andrea Sansone. Endocrine. Jan. 2017
Gynaecomastia and breast cancer in men. Catherine B Niewoehner. BMJ 2008;336:709-13
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