抗不安薬まとめ
- 管理人
- 5月7日
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更新日:5月8日
このページでは、抗不安薬全体の禁忌、代謝酵素、副作用などについて表でまとめ、ポイントを説明します。
●一覧表

●作用機序について
扁桃体に存在するGABAA受容体を刺激しおいて,恐怖関連の出力を減弱させることで恐怖の症状を軽減します。また、前頭前皮質の抑制性GABA介在神経細胞の作用を増強し抗不安作用を発揮します。
●副作用について
ベンゾジアゼピン抗不安薬には、抗不安、抗けいれん、筋弛緩、鎮静・催眠、健忘の作用があり、使用量によって概ねこの順に効果・副作用が現れます。高齢者では転倒による骨折にリスクが高まるので注意です。健忘は前向性健忘であり、高力価の薬物がリスクとなり、内服した後の記憶が曖昧になることがあります。
依存形成のリスクは、長期、高用量の使用です。依存形成のリスクとなる薬剤の特徴は、高力価、最高血中濃度到達時間が短い、半減期が短いことです。
まれに脱抑制行動の副作用が認められますが、これのリスクは、短時間作用型、高用量、小児、高齢者、脳損傷症例などです。
●効果の違いについて 単回投与と長期投与での違い
薬効の違いは、長期投与の場合は、主に最高血中濃度到達時間と半減期で決まります。
しかし、単回投与した後の分布、効果の発現と消失は、血中半減期ではなくその血漿蛋白結合率によりほとんどが決定づけられます。
たとえば、血漿蛋白結合率が高いジアゼパムは、血中から脳への分布および効果の発現のいずれも速やかですが、 単回投与の場合は、脳内の薬物濃度が上昇し濃度勾配が逆転すると、ジアゼパムはすみやかに脳から分離し、効果の消失も早いです。つまり、血中半減期の長いジアゼパムなどでも、脳における薬物濃度の低下が速いため、血中濃度が保たれている時間より薬物がベンゾジアゼピン受容体で実際に作用している時間はかなり短くなります。
それに対し、ロラゼパムはジアゼパムよりも半減期は短いですが、血漿蛋白結合率がジアゼパムよりも低く、脳からの分離も遅いため、作用の持続が長くなります。
長期投与では、血中濃度が高濃度の一定レベルで維持されており、脳における薬物濃度もこれと平衡して定常状態にあるので,上述の血漿蛋白結合率による効果の現れ方の違いは目立ちません。
つまり、単回投与の頓服使用では、血漿蛋白結合率を考慮にいれる必要があります。
●規制区分について
メキサゾラムとタンドスピロン以外は全て第3種向精神薬に指定されています。
●禁忌について
全て急性閉塞隅角緑内障と重症筋無力症に禁忌です。ジアゼパムとクロラゼプは強力なCYP3A4阻害作用を持つリトナビルとの併用が禁忌です。
●自動車運転について
タンドスピロンも含め全て運転不可です。
●代謝、代謝阻害作用について
CYP3A4で代謝される薬剤が多いです。ワイパックスはCYPを介さずに、直接グルクロン酸抱合され排泄されるので、CYP阻害薬とも併用しやすいです。
●その他
・アルプラゾラムには直接的な食欲剌激作用があります。
・SSRIやSNRIと併用する際には、薬剤相互作用について注意です。特にフルボキサミンとの併用で、ほぼ全てのベンゾジアゼピン系抗不安薬の血中濃度が高まるので、用量を調整する必要があります。例えば、アルプラゾラムはフルボキサミンとの併用により最高血中濃度が1.9倍に上昇するとの報告もあるため、半量程度への減量が推奨されます。
参考文献
各薬剤の添付文書
専門医のための臨床精神神経薬理学テキスト、星和書店
ストール精神薬理学エセンシャルズ 第5版、MEDSi
カプラン臨床精神医学テキスト 日本語版第3版、MEDSi
現代臨床精神医学 第12版、金原出版
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