気分安定薬まとめ
- 管理人
- 5月7日
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更新日:7月11日
このページでは、気分安定薬の禁忌、適応、代謝酵素、副作用などについて表でまとめ、ポイントを説明します。その後、各薬剤ごとの特徴を説明します。
●一覧表

●禁忌について
・リチウムのみが妊婦への絶対禁忌であり、その他は有益性投与です。
●適応について
・リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンは躁状態の治療に適応をもちます。
・ラモトリギンは双極性障害の気分エピソードの予防に適応をもちます。
●自動車運転について
・すべて運転不可です。
●代謝、代謝阻害作用について
・リチウムは肝臓での代謝を受けずに、そのまま腎排泄されます。
・ラモトリギンはCYPを介さずに、グルクロン酸抱合で排泄されます。
・バルプロ酸とカルバマゼピンは、それぞれグルクロン酸抱合酵素の阻害作用と誘導作用をもつので、ラモトリギンをこれらと併用する際は、用量調整が必要です。
●リチウム
・胎児の心奇形を増加させるので妊婦への投与が禁忌です。
・その他血中リチウム濃度が上昇する可能性の高い、腎障害、脱水、食塩制限などでも禁忌です。
・ナトリウムはリチウムの排泄を促進させるので、食塩制限が禁忌に該当します。
・逆に、リチウム中毒の治療法の1つに、生理食塩水投与があります。
・てんかん発作閾値をさげるので、てんかん患者にも禁忌です。
・保険適応は躁状態の治療のみですが、気分エピソード再発予防にも効果があり、気分障害の患者の自殺率を下げます。
・うつ病の増強療法にも使います。
・目標血中濃度は0.8−1.2mEq/L程度ですが、治療域が狭く、リチウム中毒に注意が必要です。
・眠気が最もよくみられる副作用です
・鎮静効果、長期的な腎機能保護の観点から、眠前単回投与が主流になってきています。
・維持療法にも使用できますが、長期使用による20%の患者に甲状腺機能低下が認められるとのデータもあります。
・腎排泄のため、NSAIDs,ACE阻害薬、チアジド・ループ利尿薬などとの併用で、血中濃度が上昇するので注意です。
・SSRIやクロミプラミンとの併用で、セロトニン症候群を発症するリスクが上昇します。
●バルプロ酸
・カルバペネムを併用すると、バルプロ酸の血中濃度が低下するため、併用禁忌です。
・胎児の二分脊椎症や神経管開存を増加させますが、妊婦への投与は有益性投与となっています。
・妊婦が内服すると、児の知能に影響を与えます。
・保険適応は躁状態の治療のみです。
・軽い傾眠や肝機能障害、吐き気、高アンモニア血症が認められます。
・汎血球減少など血球系の副作用もあります。
・安全濃度域が広いためリチウムよりも忍容性に優れています。
・混合性エピソード、急速交代型、不機嫌な病像などにより高い効果を示します。
・グルクロン酸抱合酵素阻害作用をもつため、ラモトリギンとの併用時には重症皮疹の発症に対して細心の注意が必要です。
●カルバマゼピン
・保険適応は躁状態の治療のみです。臨床的にも気分エピソードの予防効果は明らかではありません。
・強いCYP3A4誘導作用をもつので、多くの薬剤の血中濃度を低下させます。特に、フルコナゾールやリトナビルなどとは併用禁忌です。
・口蓋裂や心奇形などの胎児奇形率を上げますが、妊婦への投与は有益性投与となっています。
・眠気、肝障害、皮疹などの副作用の頻度が高いです。
・皮疹はStevens-Johnson症候群などの重症皮疹に移行することもあります。
・グルクロン酸抱合酵素誘導作用を持つので、ラモトリギンの血中濃度を下げます。
●ラモトリギン
・双極性障害の気分エピソードの予防に保険適応を持つ唯一の薬です。
・双極性障害のうつエピソードの治療にも効果があります。
・胎児奇形率を上昇させるという、明確なエビデンスがないので、気分安定薬の中で最も、妊娠可能年齢の女性に処方しやすいです。
・リチウムにおける甲状腺機能低下症のような長期使用による副作用もないので、開始後8週間のStevens-Johnson症候群好発時期をやり過ごすことさえできれば、維持療法に最も適した治療薬と言えます。
・Stevens-Johnson症候群の発症を予防するために、低用量から開始し、緩徐に漸増する必要があります。そのため、バルプロ酸やカルバマゼピンといった、薬物相互作用をもたらす薬剤との併用時には、それぞれ定められたプロトコルで漸増していく必要があります。
・添付文書のプロトコルを熟読しましょう。
参考文献
各薬剤の添付文書
専門医のための臨床精神神経薬理学テキスト、星和書店
ストール精神薬理学エセンシャルズ 第5版、MEDSi
カプラン臨床精神医学テキスト 日本語版第3版、MEDSi
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